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上司と部下
「篠原、これ頼めるか?」
「あ、はい」
今どきの、ゆとり世代とでも言うのだろうか。
若い男が資料を受け取りながら小さく返事をする。
がやがやとしたオフィスの中ではその小さな声は聞き取りずらい。
そんな男、篠原大貴を見つめながら眉をひそめる上司の杉本優一は、まだ30代にも関わらず課長にまで昇り詰めた仕事人間だ。
「課長!これ頼まれてた資料です!」
篠原と話し終わるのをひっそりと待っていた女子社員は、資料を杉本の目の前へ差し出した。
「おう、さんきゅ」
「ついでにコーヒーでもお入れしましょうか?」
「あー、じゃあお願いしようかな」
「はい!」
課のマドンナである楠千夏は軽い足取りでコーヒーメーカーへ向かった。
杉本は顔が整っているため女子社員には人気だが、残念ながら仕事一筋な性格のおかげで未だ独身である。
周りが結婚し始めていることに少々焦りを感じているのも事実。
それに気付いている楠は虎視眈々とその枠を狙っているのだった。
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