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宴も終盤に入り、みんな酔っ払って数人はめんどくさい酔い方している。
それは俺も同じで。
酔ったまま俺にもたれかかってくる楠を優しく寝かせ、酒の勢いに任せて机の向こう、壁際に歩いていく。
「お前、今めんどくせーなって顔したろ」
「別にしてませんけど……」
「この酔っ払いが!って思ったろ」
「だから思ってませんって」
「嘘つけ……」
我ながらダルい絡み方をしているなとは思うが、酒の入った今の状態ではどう接していいかもわからなかった。
終始ボーッとしてる篠原の横に座り込む。
「お前、なんでいつもそんなダルそうなの?」
そこにあったきんぴらをつまみながら聞く。
なんだ、この質問……
「ダルくないです。これが普通です」
「返事も小せぇしよぉ」
「……説教ですか?」
「あ?」
篠原の肩が静かに上下した。
小さくため息をついた篠原を、俺は見逃さなかった。
「お前今ため息ついたろ」
「ついてません。何なんですか、何か用でも?」
「飲み会なのに用がなきゃ話せないのかよ!そういえばお前飲み会来るの珍しいもんな」
「千夏に無理やり連れて来られただけです」
「千夏……?あぁ、楠な。お前同期だっけ」
「はい」
こいつ、人間関係はっきりしてない割に、楠のこと下の名前で呼んでんだ……意外……
まだ向かいで寝ている楠に目をやる。
あいつも顔は可愛いしなぁ。
「正直付き合ってんの?」
「……はい?」
俺は顔も見ずに聞く。
そして酒を飲む。
お手拭きで手を拭き、唐揚げを一口。
やっと篠原の方を向く。
口を結んだままの篠原は自分の手元をただ見つめている。
早く答えろよ、図星か……?
何故か急かしてしまうのは他人の恋愛事情に興味を持っているからなんだと思う。
自分が中々恋愛にシフトチェンジ出来ないから、周りの事情を知りたくて。
「……付き合ってはないですけど」
「けど……?なんだよ、片想い?」
そこで渋る理由が俺にはわからなかったけど、次の言葉で俺の知らない関係を伝えられた。
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