蓮池にて

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蓮池にて

 壬条(にんじょう)兼人(けんと)は夕暮れ時、ランニングをするのが日課だ。いや、毎日律儀に走っている訳ではないから日課は言い過ぎだ。何となく続いている、という表現が一番しっくりくる。気分が乗らなかったり、大学の講義が遅くまである時は面倒くさいからやらない。無理をしていないから続いている。ちゃんと毎日やるとぞ気張って予定を決めて、気持ちは後からついて来るだろうと高を括るから三日坊主になる。飽きたらやめよう、くらいの気持ちでやるから長く続く。壬条は自身の、もとい人間のそういう惰性的な一面をよく理解していた。
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