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少年編15
春子はレジャーシートに座り、仕方なしにおにぎりとおかずの入った弁当箱を取り出す。
すかさず隆一が座りながらおにぎりを手にとりほおばる。
「もー!手ぐらい拭いてよ~!」
と春子に叱られる。
「だって腹減って死にそうやねんもん。」
「なあ~隆司。」
と隆一が同意を求めながら振り向くと、そこには昆布の入ったおにぎりを頬張りながら、もう片方の手で玉子焼きを持っている食いしん坊の我が子がいる。
それを見て隆一は、
「おい!」
と思わずツッコミを入れる。
隆司はキョトンとした顔で、ご飯粒を口元と頬につけてこちらを見ている。
その光景を見て、春子と一緒に笑い転げる。
それを見て、隆司もニッコリと卵焼きを頬張りながら微笑む。
さっきの事件のことなど微塵も感じさせない。
前田家にウザいぐらいの明るさが戻ったみたいだ。
これがこの家族の良いところでもあり、失敗を軽視してしまう悪いところでもある。
ただこの度の事は失敗というより直接命に関わる事なので、さすがの前田家でも、このあと誰も海に入ろうとはしなかった。
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