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少年編20
薫は少し恥ずかしそうだがいつもの凛とした態度はくずさずに、
「隆ちゃん。健ちゃんから聞いた?」
いきなり核心に触れる。
薫の隆司への気持ちは、取り巻きの一人の美香から健二へ伝わり、そこから隆司へ伝わった。
今の言葉から察するに、そのいきさつを当人の薫は知っているみたいだ。
隆司は、
「えっ、うっ、うん。」
と、ダイレクトな問いにドギマギしながら答える。
まだ好きと告白されたわけではないが、それと同等な質問に、まるで悪さをして叱られている子供の様に萎縮しながら、じゅうたんの上に正座する。
薫はいつものように自分の勉強机の椅子に腰掛ける。
いつもと違うのは、少し照れくさそうに頬杖をついて窓の外を眺めているところだ。
そんなどことなく重苦しくよそよそしい雰囲気に耐えきれず隆司は、話をそらすため、
「おばちゃんらぁ何の話があるんやろ?」
と問いかける。
薫はその的外れな問いには答えず、
「隆ちゃんはウチのことどう思ってる?」
隆司は一気に心臓の鼓動が高鳴るのを感じて、息がつまる。
まさにドストライクの質問だ。
何の経験も知識もない隆司に答えられる質問ではない。
やはり女の子はこんな幼い年齢でも、同年代の男の子よりは遥かにオマセさんだ。
それにしても今日の薫は妙に積極的だった。
何か切羽詰まっている様子もある。
そんな薫の行動にはある理由があった。
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