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少年編28
こんな時、男親の隆一ならどんなアドバイスをするのだろうか?
春子は夕食の支度をしながら考える。
隆司はリビングの椅子に座ってさっきの告白はどこえやら、昨日買ってきたドラ焼きを頬張っている。
「もう!あんた!晩ごはん食べられへんようになるやろ!」
「だって、腹減ってんもん。」
「それよりさっきの話やけど、薫ちゃんこれから大変なんやから、優しくしたげや!」
「わかってる!」
隆司はドラ焼きを頬ばりながら答える。
「それに、男の子は一に優しさ二に優しさ、三四が無くて五に度胸や!」
「意味わからんわ。」
「えーと、だからー、そやなぁ、女の子はいつでも優しくて、何かの時には自分の事を守ってくれる男の子の事が好きやねん。」
「まあ、今はわからんでええねん。そのうちわかるわ。」
「父ちゃんは、母ちゃんのこと守ってくれたん?」
「父ちゃん?!あの人はあかんわ!」
「危ない時、母ちゃんを前に出して逃げよるわ!」
「父ちゃんアカンやん。」
と言って隆司は苦笑いする。
春子も笑いながら、
「まあ、それは冗談やけど、離れてても電話とかでいろいろ薫ちゃんの力になったりや。」
「わかった。」
隆司は春子の助言を聞いて、薫の置かれている状況が思ったより深刻なのと本当に遠くへ行ってしまう寂しさとで胸が苦しくなった。
そんな隆司の心境に追い討ちをかけるように、時の流れははやく、薫との別れの日がやってくる。
その日は晩秋の雲一つない晴天で、まだ幼くピュアな2人にとって、最果てのない青空が淡い恋心を引き裂くようでお互いの気持ちをさらに切なくさせた。
薫は駅の待合室のベンチに母親と腰掛けて、何もない天井を見上げていた。
そこへ隆司も春子に連れられてやってくる。
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