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少年編24
さらに2階では…。
こちらも幼き乙女がついさっきまで泣き崩れていたのだが…。
泣き倒して踏ん切りがついたのか、母親よりはだいぶ若い、屈託の無い人気アイドルのような笑顔で、隆司との手紙のやり取りや夏休みに会う計画の事などをハイテンションで話している。
そんな薫を見ていると隆司も寂しさはどこえやら、頻繁に会えないにせよ、これからはじまる薫との未来がとても魅力的なものに思えてくる。
むしろ思いを打ち明けたばかりですぐさま離れ離れになってしまうやるせない気持ちが、幼い二人の淡い恋心をかきたてる。
そんな思いに2人がひたっているのも束の間、
「薫ちゃん~!隆ちゃん帰るってぇ!」
「隆司~!帰るよ!」
と、甲乙つけがたい大きな声で2人の世界をさえぎる。
「はーい!」
「わかった!」
2人は顔を見合わせて苦笑する。
「隆ちゃん、引っ越しの日きてね。」
と薫がさみしそうに言うと隆司は、
「うん!絶対行く!引っ越しいつか分かったら教えてな。」
と無理に笑顔をつくり答える。
これ以上この場にいたら自分が泣き出しそうなので隆司は、
「かおちゃん、そろそろ帰るな。」
と立ち上がり、階段の方へ向かう。
「うん。」
と言いながら、薫も後をついて行く。
1階に降りると、お互いの母親がどこかぎこちなさそうな笑顔で迎えてくれる。
母親同士もいろんな思いもあり、複雑な気持ちなのだろう。
幼き2人は子供心に、いつもと違う母親の表情からそう感じとった。
それから4人はあえて別れの事情に触れることなく、近々また再訪するかのように振る舞い、春子と隆司は佐藤家をあとにした。
その帰り道で隆司は、春子から佐藤家の事情を、幼い隆司でも理解できるように聞かされる。
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