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少年編27
人は文明が進化し豊かになるにつれて個人主義が蔓延し、本来のあるべき姿や感情を失いつつある。
広くは助けあいや博愛、身近には恋愛や友愛や家族愛という大切なものを何処かえ置き去りにしてしまっているような気がする。
このままでいいのだろうか?
これも時代の流れで、止めることは不可能なのか?
何か先行きが不安で得体の知れない悲愴感をおぼえる。
しかし前田家はこんな時代の流れとは無縁で家族関係はすこぶる良好。
お互いの事をよく理解するために家族の事をいつも気にかけている。
というより、春子以外の2人は隠し事もできないほどに管理されている。
特に隆一などは春子の手のひらで踊る事もできず、いつも直立不動でビクビクしている。
もちろん幼い隆司の胸の内や行動はガラス張りの様にお見通しで、鋭い春子の洞察力に危機感をおぼえた隆司は、佐藤家の2階での出来事や自分の薫への気持ちを一部始終話してしまう。
それを聞いた春子は、まだ幼子だと思っていた愛息子が1人の女性に対して特別な感情を抱くようになったかと思うと、大人へと成長していく我が子に対して嬉しくもあり少し寂しいような複雑な心境にかられて、戸惑いを隠せない。
自分の事を信頼して全てを話してくれた我が子へ、親として何かアドバイスの言葉を伝えなくてはいけないのだけれど、珍しく頭が真っ白で何も浮かんでこない。
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