8人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「うわーぉ。珍し。レオンがもぅいる。」
「、、オレはお前らを尊敬するわ。」
「朝からまじなんなん。キモい。」
ヨレヨレのブレザーを机に脱ぎ捨てその上に指定カバンを投げたオレのライフはゼロだ。ガッツ1残しで存在してるだけだ。あんな電車通学のコイツらは猛者だった説。
「優しくしろよ。死にかけだぜ?」
「まじキモい。ムリ。」
「わらー。おおかたアレっしょ。チョコ期待して早く来たクチ?だっさー。」
中山雪人の図星に時間回復ライフがまた削られる。ううっと胸を押さえ頭をあげたオレに小1からのツレの安倍豪司は、サラリとした茶色の髪を払いすっと手のひらを差し向けた。
「チョコくれ。」
「、、おま、その空気よまねーとこよ、、尊敬する。まじで。」
言われるがままに、カバンからハートのパッケージまんまのハート型ピーナッツ入りチョコレートを取り出してくれてやる。豪司の分かりにくい表情筋が仕事して口元を綻ばせる。成長を期待した指先しか出ないブレザーの前で100円のハート型チョコを両手で持ち満足げにうなずいた。リスか。
「う、、うわーぉ、、君ら、そぅいう、うわぁ、いやぁ、恋愛はフリーダムだよー、いやいや、うん、ぇー、じゃあひょっとしてボクちんおじゃまくんだった、、?あれボクちん、突然にぼっち?トリオザぼっちなのっ?!」
雪人が一歩離れ何かぶつぶつ呟いているが口元を抑えてるせいでよく聞きこえない。豪司の手元を凝視してんな。あ。
「セットにはねーぞ。」
「むしろそうであれ!」
キレ気味な返しに、なんだあいつ?と豪司にふれば、隣に姿は無かった。斜め先の自席でいそいそとカバンにハートチョコをしまいこんでいる。その隣席で予習していたっぽい皆川なずなが振り返りニヤニヤしながらぐっとオレに親指を立てた。皆川は高い位置のツインテールを揺らし前を向くとまたタブレットに視線を戻した。ウサギみたいな可愛らしさと男前すぎる性格で女子に人気だ。その証拠に机脇にはすでに紙袋からラッピングされたチョコレートが溢れかえっていた。くっそ、どうせ友チョコなんだったらオレらにもわけてくれよ女子ども!!
最初のコメントを投稿しよう!