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チョコ!?まさかのここでチョコ?!
「で、お前、オレに渡すもんある?」
「へっ?」
キョドってるうちに、しっかり紙袋を手にしがっちり抱きかかえている事実が俯いた目に入って現実逃避することも許されない。言語を脳が拒否でちょっと意味不明が迷子になったようだ。いまなんっつった?
上から圧を感じて冷や汗が止まらないが怖いもの見たさでちらりと目線あげれば薮睨みの見下ろす目とかち合った。、、あれ。偽ザイルの耳が赤くなって、ヤメロ、思考回路永遠に迷子であれ。
「、、オレに、渡すもん、無いのか、、」
「っ!!」
偽ザイルがっ、金髪がっ、捨て犬がっ、いやっでも、オレ女子オンリーで野郎はノーサンキューで、いやそんなあからさまにしょぼくれられても今日初めてお会いしましたでシタヨネ?!!パイセンっ?!!
「、、、じゃ、、まぁ、そういうことで。」
はぁーと肩を落とし歩き出した先輩を慌てて引き止めた。カバンから取り出したのはむき出しの100円のハート型のピーナッツチョコ。
「っ、まっ、待って待って!!」
ねーちゃんから朝貰った。豪司の分とオレの分の『オレは貰えたぜ。って言えちゃう用』のソレを差し出す。
「と、ッ、と友チョコ、っス!!」
「、、っ、ねーちゃんから、、か、、?」
なんでっ!?なんで即バレしてんだ!?サトリか?!なに俺いつの間にか不思議の国トリップした!?震えが伝わる指先がパッケージをガサガサ鳴らす。対峙するオレらの後ろを何組かがすり抜けて行く。その中に皆川のツインテールが見えた。大丈夫だ。オレはまだ現実世界の住人だ。
「、、そ、そ、、そうっス、、姉貴からで、」
「ふ、ふーん。あっ、そ。そ、貰っとく。」
ふっ、と指先が軽くなり無造作にポケットに突っ込む先輩の後ろ姿に、オレは大きく息を吐き出した。こっ、こ、怖ー!!なんだあの人!?なんでバレてんだよっ!?
電車をわざと乗り損ね、ホームで迷子の感情を取り戻していると皆川がぴょこんと小さく跳ねて来た。顔だけ知ってる理工学科のツレの女子も一緒だ。
「先輩と一緒に乗らなかったの?」
「ん、まぁ、よく知らん人だし、」
「安部くんに気を使って?」
「はい?」
「「なんでもなーい!」」
反対路線に着いた電車に乗り込んだ皆川たちはによによ笑い手を振った。何気なく振り返した手には白い紙袋が下がっていて、そのままオレの気分もダダサガリした。
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