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アイラブチョコレート
駅の月極駐輪場は駅構内から直結の屋内だ。基本は社会人が利用してる。ねーちゃんが変質者につきまとわれて過保護になった母親がねじ込んだ駐輪番号は最近まではねーちゃんが使っていた。が、警察沙汰が起きて年明けから本人はタクシーで帰宅している。そんなほぼ学生が居ないはずのオレのチャリのあたりで灰色セーラー服のトリコロールマフラーが見えた。セミロングの黒髪の上に巻かれたあのマフラーは偶然にもオレとお揃いで、そう発覚してからオレは1度も巻くことは無かった。気に入って買っただけに惜しい。けどなぁ。なんかなぁ。
「なんしてんの。まちぶせ?」
「、、怜音。」
フザケ調子でかけた声に返ってきた千愛里の声は沈んでた。何か言おうと開きかけた口元はそのままに視線が下がりオレの手元で止まった。
「それ、」
一言で閉じた口はたぶん、さっきの言いかけとは違う言葉に変わった。
「コレか、、」
「よかった。なんだぁ。カゴにチョコ入れて帰るか迷ってたんよ。」
「っくれ!!入れてくれよっ!!迷わず!まじで!!ある?オレのある?!あるな?!」
「えっ、、」
必死すぎるオレに面食らって後ずさりガシャンと真後ろの自転車に千愛里はカバンをぶつけた。カツンとコンクリ床に転がり落ちたのは透明なプラケース。鳥の巣のようなカラフルなペーパークッションの入ったそれは踏みとどまろうとした千愛里のローファーの踵でぐしゃりと踏まれひしゃげた。角が潰れ脇の開いたケースからペーパークッションと一緒に丸い茶色が一粒、タイヤの側に転がった。
「あっ、」
「えっ、、、え、それ、オレの、、?」
オレのチョコが。オレのっ!チョコがっ!!うわっ、なんてこった。しゃがみこんでひしゃげたケースを拾いついでに転がってしまったチョコも拾って、う、あー、あーさすがにこれは無理か、砂粒だらけだ。
「ちがっ、あ、え、」
「違う、、?は?」
「っ!違わないっ!そう!怜音に!」
砂粒だらけのいびつな丸型のチョコ。ラッピングペーパーに白いおかず入れみたいなカップで、、手作り感満載の、、
「いやこれオレ用じゃねーな、、」
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