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「マジチョコじゃんよ。、、潰れちまったけど、1個はダメんなったけど、リカバリできんじゃね。」
カバンの取っ手を両手で握りこみ俯く千愛里に拾い上げたプラケースを突っ返す。
「、、あげるよ、それ。」
「いらんわ。」
「そ、そうだよね、潰れちゃったし!ごめんっ、、、あっ、でもっ、」
ごめん、と千愛里はオレの手からケースを取ると、パッケージを止めていたハートのシールを剥がした。まだ綺麗にカップに収まっていたチョコを口に入れる。
「怜音も食べて!うん!美味しい!」
「!??おまっ、なっ、それ、誰かに渡すヤツじゃ、」
「いいの、いいよ、いいんよっ!、、ほら、怜音、、あまっ、、うっ、、ふぅっ、ふっ、やば、あまいっよぅ、」
泣きながら座り込んだ千愛里はまたいびつなチョコを二つ続けてクチに入れる。ハムスターのように頬を膨らませ飲み込めずにうつむいたままだ。
「ばっかじゃねーの。」
砂のついたチョコが指の熱で溶けて不快になってきた。ぐずぐず泣く千愛里に背を向けさっき抜けてきた構内のトイレのゴミ箱に投げ捨て手を洗う。ばっかじゃねーの。オレはオレへのチョコしかいらねーって。いつものちょっと気取ったチロルチョコ詰め合わせを期待してんだ。
「ほれ。」
「っ、帰った、んじゃ、」
千愛里が居るのが見えて半駆けを止めたオレは泰然と自販機で買った午後ティのペットを差し出してやった。
「お前が寄りかかってんのオレのチャリな。、、1個くれ。」
「ごめっ「美味いじゃん。ナニコレ。」
「、、生チョコの、トリュフ。」
「これかトリュフ。今日、豪司が食ってたやつか。ん?これでラストか、くれ。」
鼻を真っ赤にした千愛里はオレがチョコをつまむと、ひしゃげたままの空のプラケースをカバンにしまい、代わりに見慣れたパッケージのチロルチョコの袋詰めを取り出した。
「はい。」
「おーう、さんきゅー!キタキタこれだよこれ!さすがだよ!まじよかった!っし、今年もオレは勝ち組だぜ。いやーよかったー。」
「、、それ貰ったんじゃ「これはノーカン!!いいか!今年オレが貰ったのはお前からだけだ!友チョコ文化サイコーだ!な!!っし、帰んべ。後ろ乗っけてやる。バス停までな。」
いつもの調子の千愛里がふくれっ面になったから、遠回りして家まで乗っけてやった。涙目も鼻の赤さもチャリの寒さのせいにした千愛里が家に入るのを見届けてたら、戻って来て、貸してあげる、とトリコロールのマフラーを巻かれた。明日ね!と言う。明日もあの地獄の通学電車にオレを乗せる気ですかいっ?!と突っ込むが無視された。マフラー新しいの買うか。あったけーな。
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