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ハッピーバレンタイン
「遅かったねー。あれ。それ。なになに。なにー。」
リビングのソファの定位置でニュースを拒否しザッピングしていたねーちゃんがリモコンを放り出しソファーの後ろを通り過ぎようとしたオレを振り仰いだ。紙袋を指しワントーン高く、なにー?なにー?と繰り返す。
「やる。」
背もたれに両手をかけ見上げるねーちゃんの頭の上に紙袋を乗せる。おっとぉ、と頭の上の紙袋を手に座りなおすと中を覗き込んだ。
「チョコレート?」
「知らん。」
知らんしいらん。さっさと着替えて学校でのことは忘れてしまおう。そうだそれだ今日は何も無いタダの二月十四日だ。
「あれ。これ、、はたのに会ったの?わーぉ。オススメも入ってる!」
「は?」
「えーはたのってまだ学校来てんの?まさかの留年疑惑ー。」
赤いラッピングペーパーにはられていたメモをひらひらさせたねーちゃんは、ラッピングを開きテーブルに中身のどうみても流行らないパッケージのDVDを重ねてヘラヘラ笑う。ちょっと整理しようか。主にオレの頭の中。
「はたのって、金髪?」
「金髪?」
ん?とねーちゃんはまたオレを振り仰ぎ、んー、と視線を左上にあげ考える。違うんか?
「目つきの悪い、理工学科の3年じゃね?」
「また金髪にしたんかなぁ、わかんない。体格よくて眼力はあるね。色白で派手な顔の人。進学が神奈川?金沢?で決まってるからもう学校行かなくていいみたいでさぁ。駅で会わなくなったから、どうする?って話になってたんよ。」
「はい?」
どうするってなにが、と疑問を察したねーちゃんがコレコレとDVDを示す。
「弟が普通科の1年に居るから、って。」
「はっ??!」
「ありがとねー。」
「いやいやまてまて、言えよ!聞かせろよ!まじで怖ーよ!?3年の元生徒会とガチ裏番みてーなのが、山岸探してんぞ?!とか呼び出されてみ?!心臓止まるかと思ったわ!!しかも、今日!!バレンタインだぞ?!なにごとかと思ったぜ?!」
けらけらと、なにいってんのーはたのいいやつだよー、とねーちゃんは取り合わなかった。
「れーちゃん、やっぱそれ似合うね。」
「は?」
「トリコロールカラー。」
へらっと目を細め褒めたねーちゃんに、よく見てんね、実はさぁ、と。
制服のままソファにドサリと腰を下ろしオレはマフラーを外した。
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