【二千字掌編】エッセイ 『5万回斬られた男』~福本清三さんを偲ぶ~

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 強烈なインパクトを残す俳優として、幾度かテレビで取り上げられたが、福本さんを最も有名にした作品は、2003年の大ヒット映画『ラスト・サムライ』だ。  渡辺謙さんを始めとする日本人俳優がハリウッド進出する中に、彼の名があった。物語の核である『サムライ』の静寂を表現する重要な役どころで、それゆえに死に際には涙が堪えきれなくなった。  その後、幾冊か福本さんの人生を語った本を拝読した。それによると彼は15才で大部屋俳優となって以来、地道な演技の研究を重ねた。  泥に倒れ、血にまみれる役柄は、華々しさとは縁遠い。けれど「どこかで誰かが見ていてくれる」……そう名付けた本のタイトルが、福本さんの人生そのものに思えた。
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