毎星高校生の2月14日

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 「ごめん、春……って?」  怪訝な表情の彼女。  ふふふと、笑いが唇の端から溢れる。  「そのくしゃみ……何か隠してない?」  「え、いや、なにも、ないけど」  「いつものゆづちゃんの感じじゃなくてさ、ほわんというか、キュンというか……もしかしてさ」  「ごめん電池なくなりそう。またね〜」  一方的に通話が切られ、スマホの画面は真っ暗になった。  なあんだ。  自分だって、こんなときに青春してるじゃん。  椅子を立って、ベッドにごろんと転がった。  負けられない試験があっても。  あとがない就職活動があっても。  終わらない仕事があっても。  そんなことに関係なく想いはここに「在る」し、2月14日はやってくる。  想いを直接言葉にせずに、モノにひっそりこめて渡すぐらいなら、いいよね。  朝になったら、連絡してみようかな。  綿棒の形をしたチョコレートを持ち上げると、天井の明かりで輝いて見えた。
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