また、いつか。

2/6
前へ
/6ページ
次へ
また、柔らかく風が吹いた。 俺は、ハッと顔を上げた。考え事をしている間に、アプリはもう起動していた。なぜか正座していたらしく、脚が痺れて痛い。 画面には、たまゆい、と表示されていた。 つい最近、霊は本当に存在する、ということが科学的に証明された。 霊、というか亡くなった人の記憶は電磁波のように空間を漂っているらしい。 そこで開発されたのが、このアプリだ。 亡くなってから1年以内なら、その人が1番長くいた場所で、5分だけその人の霊と会話することができるのだ。 会うことは出来ないが、声だけでも聞きたい、最後に言いたいことがある、と言った理由でこのアプリを使う人は多い。 俺は、スマホにばあちゃんの名前と命日を入力した。 しかし、いざ繋げようと思うと手が止まった。ゴクリ、と唾を飲み込む。別に、霊とかが怖いわけじゃなくて、でも俺はここに来て確実に怖気付いていた。 ばあちゃんは、俺に怒っているだろうか。 俺がばあちゃんの葬式に出なかったから。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加