1人が本棚に入れています
本棚に追加
プルルルル、プルルルル……
まるで、普通の電話みたいな音がスマホから響いた。緊張で、スマホを持つ手が震えた。俺、今までどうやってばあちゃんと話してたっけ?思い出せない……どうしよう。
プツッと呼出音が切れた。そして、
「いらっしゃい、樹」
懐かしい、ばあちゃんの声がした。俺は息を飲んだ。
「……ば、ばあちゃん?」
声が上手く出なかった。
「ばあちゃん?って、樹が呼んだんでしょう?久しぶりだね」
ばあちゃんは柔らかい声で言った。ばあちゃんの笑顔が目に浮かぶようだった。
「あ、そうだよな……え、えっと元気?じゃなくて、その……」
完全にテンパっていた。俺は、会話の内容を考えておかなかったことを後悔した。
「樹はどう?元気ですか?」
「あっと……元気だよ、安心して」
ばあちゃんの声で、俺は少しずつ落ち着きを取り戻した。一度深呼吸をする。大丈夫、話せる。
スマホの向こう側で、良かったと笑うばあちゃんの声を聞きながら、俺は本題に入る覚悟を決めた。
「あのさ、ばあちゃん。俺、あの日、ばあちゃんの葬式行かなくてごめん……!」
ずっと伝えたかった一言。胸につかえていた思い。口に出すと、後から後から溢れ出た。
「ずっと、後悔してて。俺ばあちゃんのこと大好きだったのに、なんで行かなかったんだろうって。高校入ってからも、会おうと思えば会えたんじゃないかって。電話、とかもできたはずだって。だから、こんな……こんな……」
「いいんだよ」
俺の言葉を遮るように、ばあちゃんの優しい、でも不思議と力強い声がした。
「樹はあの日、全力で頑張ったんだろう?それなら、ばあちゃんも嬉しいよ。そりゃあばあちゃんも樹に会いたかったけどさ。でも、あんたが元気でいてくれたら、それでいいんだよ」
ばあちゃんはゆっくりとそう言った。一言一言が俺の心に響いて、少しずつ溶かしていった。
「ばあちゃん……」
「何だい?」
「あ、りがと、う。本当に、ありが、とう」
気がつくと俺は情けないくらい泣いていて、自然に出た感謝の言葉も、嗚咽交じりで聞き取りずらかったと思う。
「こちらこそ、ありがとうねぇ」
そう言った、ばあちゃんの声も震えていた。
最初のコメントを投稿しよう!