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朝起きて、まず家の全ての窓を開ける。
布団を外に干して、畑仕事。
終わったら庭にあるテーブルセットで朝食。
最後にお茶をしたら、川に洗濯をしに行って、その帰りに森で必要な薬草や木のみを採ってくる。
またテーブルセットに座って本を読んで、自分で調べて作った魔法や魔法の展開を書いていく。
小さい頃からずっとやってる遊びだ。
子どもの頃、母が趣味で集めていた昔の古い魔法書や各地に伝承されている、特定の民族だけで伝わっている魔法集を読むのが好きだった。
その魔法や呪文を読んでいくとその人たちが考えていることが流れ込んでくる。
なんのために、どうやって作ったのか、どうなっていくのか。
魔法の一つ一つは人の想いや個性に溢れている。作った人ごとにクセもあって、名前がなくても誰が作ったものなのかや誰の影響を受けているのかもわかる。魔法を見たら、作った人やその魔法のルーツを読み解く。
そのうちに自分でもやりたくなって、読みながら必要なものを集めたり、言葉を読んでみたり、分解をしたりしていくと自分でも新しい呪文や魔法が作れることがわかってそこからは楽しくて、ずっと書き溜めている。
どうでもいいものから、生きていくのに必要なものまでもう何冊になるのかわからないくらいだ。
国を出て、この土地に住みはじめて3年くらいたってわかったのはこの森はずっと春のような気候で、食べるものや薬に必要な植物にも困らない。
常にポカポカとした昼間は優しい光が降り注ぎ、夕方近くになるとやわらかい陽が落ちていく。
何事もない一日を毎日ゆっくりと繰り返すことができていることに幸せを感じていた。
最近、昼過ぎに川で泳ぐようになった。
僕の中に何か変化が起きている。今まで1人になれたことで感じていた安心感が揺れ始めていた。
でも、その揺れがどこから発生しているのか僕にはわからなかったから水の中に隠れる。
水の音は僕を飲み込んでいく。水の中で目を開ければ空と僕と水の間の境が曖昧になって、全てが水に溶けていって、1つになっていく感覚はとても心地よかった。
泳ぎ終わってそのまま岩の上で寝転がると今度は太陽の光に包まれて、そのまま吸い込まれるように寝てしまう。
あー、気持ちがいい。太陽のいい香りがする。
このまま水に溶けた不安もすべて蒸発していけばいい。
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