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冷たいあの人が冷たくなって足下に転がっている。それを冷ややかな目線で撫でる私は冷血かしら。
足を組み貧乏揺すりする足先越しに彼を観察する。
フローリングに仰向けに倒れ、長い手足を投げ出して。こちらへ向けた顔はそうとうな間抜け面にみえるのに。
この逞しい腕に抱かれ、この唇を求めた。
今はもう輝きをなくした相貌に見詰められたいと願い、身を焦がした。
大きな手のひらに包まれ、太い指に揉みしだかれる記憶がよみがえり、からだの芯を熱くする。
でも、それはもう幻。
活動を停めた肉体は一個の肉塊となって、憎い男は溶けゆく運命を与えられ。
貴方はもう二度と私を振り返ることない物となり、私はもう二度と愛されることない亡霊となった。
「まって、まだいかないで」
彼の指がぴくりと痙攣した。
「まだよ、もう少しまって」
冷たい貴方は、また私を置き去りにするつもりなのね。
ゆっくりと立ち上がり、私をその力ない瞳で見下ろした貴方は、本能のおもむくままに叫ぶ。
「死体ゴッコなんてつまんねーよ! 早く飯にしてくれよ!」
私も本能に火がつく。
「もう少しくらい、いいじゃない! 死体役がしゃべんな! 罰に、肩揉み奴隷十分ね!」
不機嫌な二人は、香ばしき香り立つチキンライスオムレツを冷まさない関係。
〈了〉
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