芹沢優子

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 私は自動販売機のボタンを押すと、すぐにガタンと音が聞こえ、下を見ると、受け渡し口にカフェオレが倒れていた。さすが、缶と言うべきか、特にへこんでいる部分は無い。自動販売機というものは、飲み物が落ちる衝撃で、出てくる時にどこかしらへこんでいることがある。ペットボトルの炭酸なんて、最悪だ。しばらく時間を置かないと、メントスコーラ状態になってしまう。  私は缶のプルタブを開けると、さっきまで何も表示されていなかったカフェオレのボタンが赤くなっていることに気づいた。「」と書かれている。どうやら最後の一つだったそうだ。 「ラッキー」  私は「売り切れ」の文字を見ながら、ぐいっとカフェオレを体に流し込むと、ホッとする。一気に糖分が吸収されたような、そんな感じだ。これでまた仕事を頑張れる。  私は自動販売機から距離を開けると、近くの椅子に座った。それからまたぐいっとカフェオレを体に染み渡せる。すると、私が自動販売機の前を開けた瞬間、別のスーツを着た男が自動販売機の前に立つ。
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