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「えっ、売り切れ?」
私はちらっと彼を見ると、彼は後頭部の髪をぼりぼりと困ったように掻きながら「えー」という声を漏らしていた。名前も、顔も見たことがない人だ。きっと、この会社の新入社員だろう。
私は最後の一口を綺麗に胃に流し込むと、缶を潰し、ゴミ箱に捨てる。
「あ、俺のカフェオレ……」
「カフェオレ」という言葉に私は反応し、彼の方を見ると、彼は弱々しい子羊のような瞳をして、ゴミ箱を呆然と眺めていた。どうやらカフェオレを買おうとしていたらしい。だが、私が最後の一つを買ってしまったせいで、彼は飲めずにいる、と。
彼と目が合った。私は一瞬ドキッとすると、彼が私に向かって苦笑を浮かべながら会釈をする。私も会釈をし返した。
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