赤く染まる愛憎

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その翌日結也と平井は日枝神社に来ていた、二人が見つめる先には花を手向ける新崎の姿がある。手を合わせ終えると二人のいる最上段へ上ってきた。 「大樹の無実を証明してくれてありがとうございました。これで大樹もゆっくり眠れます。」 「今日来てここに来てもらったのは大樹さんがあの日なんで日枝神社に来たか分かったからです。」 結也の言葉に新崎の目が大きく開き、知りたいと訴えかけてくるのが伝わってきた。結也が後ろにいた大山を紹介すると大山は新崎を社殿の前に案内した。 「この日枝神社は狛犬の変わりに神の猿と書く神猿が入り口にいます、この二匹の猿は夫婦で夫婦円満や縁結びにも御利益があるって言われてます。」 「猿?」 「お二人とも一九九二年生まれなので申年ですよね?きっとそれでここに池田さんは来たんだと思います。それからこのお守り実は一度開けてあったみたなんです、どうぞ。」 結也はお守りの一つを新崎に手渡して中を開ける様に言った。 「それから、そのお守りの中身も見てみてください。」 「中ですか?」 促されるままにお守りの口を解いて中を探ると中からシルバーの指輪が出て来た。 「え?これって。」 「こっちも開けて見ますね。」 結也はもう一つのお守りの口を解くと中からは同じ様に指輪が出て来た、それを新崎に渡して指輪を比べると大きさが違うのが分かった。 「一か月前、この夫婦像の前で大変熱心にお願い事をされていて、何のお願い事ですか?と聞くともうじき交際記念日だからそこでプロポーズするから成功しますように。もし上手くいったら円満な夫婦になれますようにとお願いしてると言ってました。」 彼が残していった大きな忘れ物を手に新崎はその場に崩れ落ちて泣いていた、あの日挙動がおかしかったのはプロポーズを控えていたからでここに来たのは最後の後押しが欲しかったのだろう。そんな彼に彼女はもう会えないのだから、もう誰にもどうすることも出来ずに彼女の鳴き声が寒く澄んだ空気に響いた。 「彼女大丈夫かな?」 「大丈夫ですよ、彼氏の分まで頑張ってくれます。」 ゆっくりと歩く新崎とそれを支える平井の姿を見ながら結也と大山は話していた、そのまま大山に礼を言って行こうとすると大山の足元にちょこんと座っている二匹の猿がいた。 結也は周りの参拝客にバレないように「ありがとな。」と二匹の頭を撫でて新崎と平井を追っていった。 池田の事を思い出してくれたのはあの二匹の猿だったのだ、また今度お礼をしなくてはと結也はなにをあげたらいい考えながら走って行った。 無事に事件も解決しやっともらえた休日に結也は愛車のバイクの後ろにいとみをのせて赤坂氷川神社に来ていた。須平も関わっていたしと思いちゃんと報告しなくてはと思ったのといとみも外へ出て遊びたいと言うので連れて来たのだ。鳥居をくぐると早速あいが出迎えてくれたのでいとみはそのまま遊び場へ一目散だった、結也は社殿の方へ向かい社務にいた掬也と春子に事件解決を報告した。 「そんなわざわざいいのに。」 「いや、だっておじさん大変だったし。てかおじさんは?」 「あ、お父さんならあそこ。」 掬也が指差す方には正座して社殿の奥にいる須平がいて、どうやらお札は貼ったままらしい。 「え?おじさんずっとあのまま?!」 「私はもういいんじゃないかってずっと言ってるんですけど。」 「いや、もう散々な目に合わされたから増上寺の阿来さんに修行つけてもらう様にお願いしておいたんだ、ほら来た。」 掬也の目線の先にはあいといとみと仲良く手を繋いでくるのは増上寺の僧侶であり阿弥陀如来である阿来量哲で仏様特有の優しそうな雰囲気が伝わってくる。 「おっ、こりゃまたイケメンが集まっているね。」 「阿来さんわざわざ足を運んでもらってありがとうございます。」 「何、お安いご用だよ。問題のお父様はどちらにいらっしゃいますか?」 すると掬也にいる須平を呼びに行った。相変わらず動けないままだが首を横に振って「嫌じゃ。」と抵抗していた。 「すみませんがよろしくお願い致します。」 「はい、確かに。調度師走で忙しくなるときで手伝ってくれる人が増えて助かりますよ。じゃ須平さん行きましょう。」 素直に体は動いて行くがどうしても嫌ならしく「結也頼む、助けてくれ。」と懇願する須平を見てデジャブを感じていた。 そんな結也の横で無邪気にあいといとみは「いってらしゃい。」と手を振って送っていた。 「なんか神様が仏様の所に修行に行くって不思議だね。」 「でも逆に神社にお祓いお願いする仏様もいるんだって、案外そんなものなのかもね。結くんお茶でも飲んで温まってってよ。」 掬也の誘いに素直に乗って社務所の奥に行く結也、境内ではあいやいとみ、狛犬が元気に遊び回っている。 どんな所にも神様はいて私達の近くにいるんです、そして人間と同じようなことで案外悩んでいたりするものなんです。 さて次はどんな問題が結也に巡ってくるのでしょう。
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