暇を持て余した神々の

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暇を持て余した神々の

もう何日目になったか、張り込みをする神野結也は年季の入ったアパートの薄暗い部屋のカーテンの隙間から目の前にあるこれまた年季の入っているアパートの一室を見ていた。 深夜一時までもう少しと言う時間、強盗殺人犯の張り込みをして大分日数が経ち高御産巣日神の神である結也でも疲れの色が見えてきた。 「神野さん変わります。」 コンビを組んでいる平井雅秋が仮眠から戻ってきて結也に声を掛ける、寝てきたはずの平井だが顔には疲れが出ている。 「まだ寝てていいぞ、朝ぐらいまでなら行けそう。」 「なんかしっかり寝れないんすよ、起きてた方がマシです。」 「大丈夫かよ。朝んなったら高井戸署の人来るから無理しなくていいって。」 心配する結也を他所に「起きてます。」と結也の横に座る平井、心配だが朝までなら持つだろうとも思いそのまま一緒に見張る事になった。 見つめる先のアパートの部屋には何の動きもなくただ時間が過ぎていき夜中の二時を回ろうとする頃、暗闇で人影が動きアパートの近くをうろついているのが見えた。 「平井所轄に応援要請、動ける準備しとけよ。」 「はい。もしもし、阿佐ヶ谷で張り込みの平井です。犯人来ました。」 平井が電話をする横で結也は目を凝らして犯人を確認する、やはり結也が『視えて』いた通り犯人は二人組だった。 「取りあえず阿佐ヶ谷交番の人がすぐにこっち来るみたいです。ホントに二人組だ、神野さん流石っすね。」 「最近よくつるんでるって情報多かったから、勘みたいなもんだよ。」 平井の言葉に勘と言って誤魔化す結也、縁結びの神である結也は人との縁が視える訳でそれは恋愛だけでなく人間関係の縁も視えている。 容疑者の岩槻が浮上して来て聞き込みの中で椎野との縁があることは分かっていた、だがこれといった関係性を窺わせる証拠が無くなる結也も余り強くは言えていなかった。 「神様だから全部分かってる。」なんて口が裂けても言えない事だ。 「たぶん長居はしないだろうな、向かいの路地で待機して一気に捕まえるか。」
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