隣人は意外にも神様?

1/3
前へ
/11ページ
次へ

隣人は意外にも神様?

貴方は神を信じますか? 少なからず皆さん一度は神様にお願いごとをしたことがあるのではないでしょうか、人によって仏様だったりキリスト様だったりアラー様だったりと神様も様々でしょうしお参り・お祈りするのも神社・お寺・教会・モスクなど変わってきます。そんな神様にお願いごとをして叶ったなんて経験ありませんか? 受験に受かった、恋人が出来たなどどんなことでも構いません。それは神様がお願いごとを叶えてくれたと思った人もいるでしょう、確かに神様は私たちの身近でいつも見守ってくれています。ここの警視庁の刑事課二係にいるこの男も実は神様なんですから。 「神野さん、この聴取のチェックお願いします。」 「おう、机置いといて。俺これで上がるから。」 「え?もう帰るんすか?」 「明後日観月祭あるから準備手伝わねーと親父うるせえんだ、じゃ御先失礼します。」 「お疲れ様です、かんげつさい?何だそれ?」 「お前知らないのか、東京大神宮の祭りだよ。神社は何かと祭ごと多いからな。」 「東京大神宮って神野さん家って神社だったんすか?」 「知らなかったのかコンビ組んで半年経つのに、神野は次男坊だからそんなに首突っ込まなくていいだろうけど。まああいつの事件解決件数考えたら早く帰るぐらい問題ないだろ。」 そう言って刑事課長の増岡竜太は聴取書を持って置いてけぼりをくらった平井雅明の肩をポンとして自分の席に戻って行った。平井は言われた通りに聴取書を神野の机に置いた、この事件の犯人も神野が決定的な証拠を見つけた為に逮捕に至ったのだ。神野は刑事課のエースと言っても問題ないそんな男だった。 そんな神野結也(かみのゆうや)が愛車のバイクの排気音をなびかせて帰ってきたのは家である東京大神宮、駐車場にバイクを置いて本殿へと向かう途中狐の耳のついた小さい子が結也に寄って来た。 「おっいとみじゃねえか、今日はまだ社に居たのか?」 寄って来たのは東京大神宮の境内にある飯富稲荷神社の神様である稲荷大神で、小さい子供に見えるが列記とした神様だ。そんな小さい神様を抱かかえた結也に社務から声を掛けて来たのは兄である神野朝火だった。 「もう帰ってきたのか、今日は早いな。」 「観月祭の準備しないとだろ?」 「それもだけど先に本殿行って願事視てきてくれ、今日はやけに縁結びの参拝多かったからな。」 「わかった、いとみ先家帰ってろな。」 頷いて狐に変わってトントンと奥の家に行くいとみを見た結也は本殿に行き今日訪れた参拝者達の願事の「縁結び」を視ていく。 もうお分かりだろうがこの神野結也こそ冒頭で言った神様だ、人間界で生きていく為に必要な名前として神野結也と名乗っているが本当の名は高御産巣日神(たかみむすびのかみ)で造化の三神の一神で人の縁を視ることが出来るのでこうやって結也が縁結びを任されているわけだ。 一通り願事を見終えて本殿を出ると朝火が観月祭の準備をしていたのでそれを手伝い終わった頃には暗くなっていた。 「ありがとな、助かったよ。」 「たまには手伝わないとな、ただいまー。」 「おかえりなさい、もうじきごはんよ。」 家の居間に行くと奥の台所で料理をしている母の豊が声を掛けた、リビングでは子供姿に戻ったいとみを膝に乗っけた父の陽司がテレビを見ている。 何となくわかっている人もいるだろうがこの一家は皆神様である、父の陽司は皆も聞いたことあるだろう天照大御神(あまてらすおおみかみ)、母は豊受大神(とようけのおおかみ)。 天照皇大神は福徳・開運、豊受大神は衣食住・農業の神であり結也の兄である朝火は天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)で火・土地の神として祀られている。 また稲荷大神(いなりのおおかみ)のいとみは芸事の神様として多くの人から愛されている、各々が神として存在しているので父や兄弟など全く関係はないがこうやって人間界と密接しているため家族という形を取って生活している。 「明後日の準備は大丈夫か?」 「後お供え物だけだから、父さんよろしく。」 「ただいまー。」 「治気おかえり、遅かったなもうご飯だぞ。」 「わかった、いとみただいま。」 抱きついてきたいとみを撫でるのは神野治気(はるき)で兄弟の三男で大学で獣医学を学んでいる、本来は神産巣神(かみむすびのかみ)で病気・怪我の治癒の健康の神。 この六人の神様が東京大神宮の神様であり、陽司と朝火は神職として勤めている。他の神社の多くも参拝者の願い事をすぐに聞けるようにと神職についている神様が多いのは当然と言えば当然だ。食卓に着き家族で食事を囲む普通の家庭で内容も人間の家庭とそうそう変わらないが登場する名前の次元は違ってくる。 「朝火、赤坂氷川の奈美子さんとのお話まだ返事してないのか?」 「だから私はそのお話は遠慮しますって言いましたよね?今縁談とかそういう話は興味ありませんから。」 「確かにあそこの奇稲田姫命(くしなだひめのみこと)は容姿端麗ではありませんが、とてもいい子ですよ。」 「別に私は奈美子ちゃんの容姿で断わってるんじゃありません。」 陽司と豊に次々と話を押しつけられ朝火の周りにはメラっと静かに炎が立ちこめた、その炎で稲荷寿司に夢中になっていたいとみは気付かずに足を火傷し「キャン!」と大きな声をあげた。 「あ、いとみごめん。」 「もう兄さん落ち着いよ、いとみおいで。」 怒りの炎を静める様に促して涙目のいとみを抱っこして火傷した足を摩る治気、優しく数回火傷した所を撫でればスウっと火傷が治っていきいとみも笑顔に戻り再び稲荷寿司を頬張っていた。元気になったいとみに安心してまたみんな食事の手が進むが朝火はバツが悪そうに味噌汁を啜っていた。  風呂上りに結也は縁側に出ると庭で電話している朝火がいた。 「うん、ごめんね。じゃあまた明日取りに行く、うんそっちもよろしくねじゃおやすみ。」 「何?彼女?」 「違うよ、お前なら分かってるくせに。」 縁側に二人並んで座るともうじき満月になる月が煌々と照らしていて、庭の桔梗や金木犀がはっきりと見えるほどだった。結也は縁が視えるが神様の縁は視えたり視えなかったりとさまざまだが今回は自分で実際に見たからと言うのがある。以前駅前で聞き込みがあった時に花屋の店員と楽しそうに会話している朝火を見かけていた、朝火の縁は視えないが相手の縁は朝火といい形になりそうなものに視えた。 「前に駅前で聞き込みしてた時に花屋にいた兄貴見たんだよ、可愛い人だったよね。」 「弥生さんって言っていつも明るい人でね、うちの花頼むの多くて仲良くなったんだ。」 「へえーそれで夜も電話する仲なのかー。」 「観月祭用のすすきお願いしてあったし、今日店に忘れ物したんだよ。」 「兄貴それ、わざと忘れたりして?」 結也が何気なく言った冗談が実は当たって恥ずかしかったらしく朝火からは隠しきれずにポッポと火が少し出ている、感情で炎が出やすい朝火の力は悪くもあるが素直で嘘を付けないのも良いところだ。動揺してる朝火にまた赤坂方面に行くことあれば赤坂氷川に行ってみると約束して結也は部屋に戻った。    
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加