ノスタルジスト

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 2000年代の少女向け雑誌を読んでいたら、妻に怪訝な顔をされた。 「これも仕事の一環なんだ」 「でしょうね」  デスクに座る僕の弁解に、妻は肩を上げて頷く。仕事の合間に僕の部屋へ様子を見に来たようだ。  続けて妻は表紙に映る半世紀近く前の少女の笑顔を見つめ、深刻そうな顔をした。 「今回のお客さんも、随分とお若いのね」 「そうだな。まだ60過ぎだ。しかもベルギーにいる」 「ベルギー……」 「2000年代は得意じゃないけれど、彼女のために全力を尽くすよ」  僕は妻に笑顔でそう言うと、再び作業に戻った。  ノスタルジスト。それが僕の職業だった。
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