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「そうだね。確かにファッションや家電製品、インテリアは調べてしまえば分かることだ。
でもその時代に流れている空気感や匂いは、その時生まれていない僕たちには分からない。
1990年代や1980年代が得意なのは、これまでに担当したお客さんから聞いた話がたくさんあるからなんだ。
比べて2000年代を指定してくるお客さんはまだ少ない。だからあまり得意ではないんだよ」
モデリングの技術や過去に対する豊富な知識はもちろん、ノスタルジストにはクライアントから「その時代にいた人々の生き様」を引き出す力が求められる。
僕は当時の写真と膨大な2000年代の資料から、XR空間の「ラフ」を完成させ、ベルギーにいるクライアントとの打ち合わせに臨んだ。依頼されたのは彼女が幼いときに住んでいた自宅の再現だ。
しかしまだこの段階では当時の雰囲気を再現しただけの「模造」にすぎない。彼女から時代の空気感や匂いを聞いて、「本物」に限りなく近づけていく。
打ち合わせはVRのSNS上で行われた。見かけ上は快活な女性のアバターだが、彼女は重い病を患っており、安楽死が合法化されたベルギーに滞在している。
「いかがですか? 気になる点があれば、なんでもおっしゃってください」
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