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現物は用意できなくても包装を見ればある程度の匂いは想像できる。
「今度はカレーでも作るの?」
部屋に戻るとまた妻が訊いてきた。
「ああ。同じカレールーでも年代によって微妙に違うからね。2000年代は酸味料や香料が多くて食欲をそそるものが多い。まあこれは微妙な違いだから難しいんだけどね」
「そうなんだ。でも今作っているXRはカレーを作っている部屋ではないんでしょ?」
「うん。何日か前にカレーを作っていた、でも今日の夕飯じゃない。そんな匂いを目指したいんだ」
「そんなんで上手くいくの?」
「わからない。でももう一つ、お客さんから送ってもらったものがあるんだ」
僕はコントローラを動かして、あるデータを空間上に出した。
「これは亡くなったお客さんのお母さんの私服。それにこっちがお父さんの私服さ」
「へえ。でもちょっと匂いとしてはあざといんじゃない?」
「うん。だからカレーと混ぜ合わせるのさ」
「考えたね」
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