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亡くなる直前に仮想空間で家に帰る。それは走馬燈のように流れる死に際の幻に近いのかもしれない。
しかし仮想空間であっても、これは現実であり、かつて体験したことの再現なのだ。
「ありがとう。ノスタルジストさん」
XRのなかで彼女は静かに旅立っていった。ベルギーにいたのは安楽死が合法化されているからであり、そのためにわざわざ日本を出なければいけなかった。所謂、安楽死ツーリズムというやつだ。
本当なら自分の慣れ親しんだ場所で生涯を終えたい。そう願っている人は多いはずだ。たとえ模造であっても、仮想であっても、できる限りそんな場所に「終の棲家」を近づける。
それが僕の役割だと思う。
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