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狩野は従来型AIとの違いを強調して止まなかった。ひのとにも、理解できない話ではない。ただ残念ながら、相馬ひのとは新進気鋭の若き広告デザイナーである。日々の仕事でキャッチコピーを案出することはあれど、文章を書いて生計を立てているわけではない。
「狩野さん。アナタ、あたしの仕事をご存じなのかな?」
「そ、それはもちろん」
広げた両手を引き付け、狩野は慌てて反応した。
「先日えんじ……話題になった広告も、相馬さんがデザインされたのですよね」
「そうそう、よく調べてるじゃない?」
「出稿するすべての広告にいちいち署名をしていれば、それはまあ目立つべくして目立つと思いますね」
水出しのアイスコーヒーを口に含み、狩野は間を空けた。それからやおら席を立ち、鳥籠の覆いを取り去った。
ひのともそれに倣い、鳥籠の中を覗き込んだ。
白鋼で出来た、猛禽のオブジェ。彩色はほとんど施されておらず、アルミニウムのような風合いが全身の基調を成している。彼は首を傾げ、眼窩のカメラ機能で彼女を捕捉した。
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