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「……これが、そのAI?」
「左様。私が自動執筆AI『コギト』です」
狩野を指差し問い掛けるひのとに返答をしたのは、猛禽の方であった。洋画吹替の如き声に、ひのとが驚き身をすくめる。
「喋れるんだ!」
「八色電工のAIとは、そういうものなのです」
狩野の声がこころなしか弾んだ。
「そう、それで……相馬さんにこうしてお会いしているのには訳があって……」
「そこから先は、私が説明します」
コギトは一度両翼を伸ばしてから、それを再び折り畳んだ。羽根を広げたときにそれが鳥籠に触れ、かしゃんと音を立てた。
「籠から出したげなよ」
自由の身となったコギトはひのとに礼を述べてから羽ばたき、卓上に飛び乗った。
「どういたしまして……キミも食べる?」
ひのとはバニラフロートをまたひと匙掬い、コギトの眼前に差し出した。首は背けられたが、スプーンが収められると彼はまたひのとを見据えた。
「死ぬ前に貴方にお会いしたがっていたのは、実は私の方なのです」
拒まれたバニラアイスを口に含んでから、ひのとは眉をひそめた。
「キミ……いま、『死ぬ』って言った?」
「申し上げました」
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