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「狩野さん、AIが死ぬってどういうこと? 教えて」
ひとり掛けのソファにうずくまるように座る狩野は、頑として口を割らない。止むを得ずコギトが説明に回る。
「ひと口に言えば、スクラップにされるのです」
八色電工製AIには、S級とA級の2種類のグレードがある。
「製造側の都合で行けば、A級AIは『高級車』たるS級の出来損ない……」
コギトをはじめとしたほとんどのA級AIは、売れなければ解体される。意識部分が、再構築によってS級に転生するための素材となるのである。『大衆車』をジャンクパーツにして、『高級車』に組み直すような技術ではあるが再現性に乏しく、再構築に成功した事例などは数えるほどしかない。
「キミが解体されて、鶴とかになるってこと?」
「そんなところです。ただ、単なるハードの交換ではありません。意識の再構築とは言わば、コバルトブルーとイエローを混ぜてビリジアンを生み出すような所業。それはもう、元々の色ではありえない」
死後、人間の意識が神様などの超越者によって再構築され、赤子に転生するという死生観――そんな曖昧なイメージを、ひのとはぼんやりと思い浮かべた。
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