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「ですが貴方に契約いただけるなら、私は生き延びることができます」
「で、でも、お高いんでしょう?」
狩野がタブレットの電卓で、概算を示した。もともと購入する動機などなかったのだが、慈善の意欲すら断ち切る桁数である。
場が静まり返り、冷房の音が室内に行き渡った。
「……策なら練ってあります。貴方の力を借りて、私がS級昇格試験に合格すればよい。そうすれば、私は利益率の高いS級AIとして、解体を免れることができるようになる」
狩野が目を丸くした。
「そんな、無理でしょ!」
コギトは狩野に向き直り、首を垂れる。
「私に1年間の猶予をください。そしてその間、彼女の費用負担も免除していただきたい」
「そんな我が儘、通るかなぁ……」
狩野はそれでもキーボードを取り出し、タブレットに彼の主張を要約した。
「貴方は如何ですか、相馬ひのとさん。1年間、私との共同生活をお願いすることになりますが」
「あたしは――」
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