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相馬ひのとはタワーマンションの自宅ウッドデッキから、眼下に広がる朝焼けの東都を目で追った。この街の高い所に居るのはきっと富者か愚者であり、自分には前者に成り行くべき才がある――ひのとはそう信じている。
レモンイエローとペルシアンブルーの間から、大鳥の影がこちらに迫り近付いた。眼前で減速したコギトにひのとが右腕を差し出すと、両足の剛力が滑らかな肌に食い込んだ。
「鷹匠みたいだ」
「私これでも、ハクトウワシ型AIなのですけれど」
「カモメの郵便屋さんみたいな格好で言われてもね」
コギトの首には最小限の荷物が提げられている。中身は充電用の太いケーブルとのことだった。
「とりあえず、中に入ろ」
室内に通されたコギトは食卓の椅子の背もたれを止まり木とし、ひのとが向かいに腰を下ろした。
「1年間延命した感想はどう?」
「あくまで想像ですが、医師から余命宣告を受け取ったようなものでしょうかね。絵を描いて、充実した1年を過ごしたいものです」
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