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手配されたモビリティにその調査課の女性と乗り込む。彼女はナギと名乗った。ゆっくりと流れる外の景色は、すでに夜だった。ナギは何も話さなかった。
「あらためてですが、ありがとうございました。もう少しで、この体を切り刻まれるところでしたよ」
「依頼を遂行しようとしただけです」
ナギはこともなさげに答えた。
「夢を見ただけのに、散々な目に遭いました」
「夢を見たのは事実なのですね?」
ちらりとこちらを見る。
「ええ、まあ――」
私の返答を確認したあとに、ナギは誰かと通信を行っていた。ノンバーバルのためその内容はわからない。
窓の外を見る。すっかり遅くなってしまった。妻は心配をしているかもしれない。早く帰って安心させようと思う。
家まで送ってもらえるはずだったが、外の風景に変わりはない。同じ街並みが繰り返し、流れていった。何かがおかしい。あのカンセリングセンターはそんなに遠くなかったはずだが――。
不意にナギが半身を寄せた。整った顔立ちに、思わずドギマギする。しかし、こちらを凝視したその赤紫の瞳は不自然なほど、冷たかった。
「やはり夢を見たオートマトンというのは前例がないようです」
なるほど――そういうものなのだろうか。
「実は――私が依頼されたことは、まだ完了していません」
無機質な口調で告げた。
「貴方ののアルマは、深い迷宮に迷い込んだようでした。サルベージをするにしても見つからない。しかし、奥様の懸命なお声がけに貴方は応えてくれた。それで見つけることができたのです」
――妻の呼びかけ?
「ちょっと待ってくれ。一体、何の話ですか?」
「貴方の夢を終わらせましょう」
ナギの顔がコーヒーのクリームを混ぜたようにゆっくりと揺らいでいった。そして、現(うつつ)だと思っていたこの世界が急速に遠のいていく。
[Music: Yume No Tamago](https://www.youtube.com/watch?v=xQ3jV4PdToU&list=PLf_zekypDG5qBT4O0u7pO6N7__F1FPIYw&index=5)
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