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「……お金貯まったらさあ」
「……うん」
「逢いたいねえ」
「逢いたいねえ」
画面越しに見つめ合って話し続けるのは、なかなか間がもたないものだ。
忍はそんな小さな発見をする。
無意味に紅茶をすするペースが速くなる。治史も伏し目がちになってきた。
「……コロナがおさまったらさあ」
「うん」
「仙台以外で逢うのもいいねえ」
「いいねえ。お金貯めたいねえ」
会話がループし始めた。
このあたりが切りどきなのだろう。気づけばチョコも残り3個になっている。
そろそろ終わりにして、寝ようか。
そう言おうとした忍の目に、信じられないものが映った。
空になった治史のグラスにサイダーを継ぎ足す、真紅のマニキュアの塗られた指。
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