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「ほら、ま、周りに感染者も出て、忍にも会えなくて、やっ、やっぱりどうにも気持ちが落ち着かなくて……人に会うべきじゃないのはわかってても、寂しいと心が折れそうで、孤独に勝てなくてさ。弱い人間なんだよ、俺」
「だからって……あたしはどうなるの」
「ごめんな。知ってると思うけど俺、中途半端は嫌いなんだ。これからはこの子とやっていきたいと思ってる」
「そうなんだ……」
忍は唇を噛む。皮肉にも、甘いチョコの味がした。
普段は穏やかでも、こうと決めたら動かない治史だ。今から気持ちを取り戻すことなど無理だとわかっていた。
「……わかった。さよならだね」
「ごめんな」
「でも、もっと早く言ってくれたらよかったのに……」
「ほんとごめん。忍のこと本気で好きだったのは嘘じゃないから」
「……あたしも。4年半、ありがとう」
「ありがとう」
治史は声を詰まらせた。
忍も胸が締めつけられたが、涙は出なかった。
「退室する」ボタンをタップした瞬間、ふたりはあっけなく終わった。
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