オンラインで、裏切って。

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* 「もういいよ、ありがとう」 タブレット端末の電源を落としながら治史が言うと、鈴子(すずこ)はふっと笑った。 「よかったですね、あっさり納得してもらえて」 「うん、なんかちょっと拍子抜け」 「治史さん、ちょっとどもってたけど、それが逆にリアリティが出てよかったのかも」 「意外と演技派なのかな、俺」 鈴子は治史の近所に住むサークルの後輩だ。付き合っているわけでもなんでもない。 第三者でも現れないかぎり忍は別れに納得しないだろうし、言葉だけで心変わりを告げるより、多少のショックを与えた方が現実と向き合いやすいだろう。 そんな見立てから、今日はバイト料を払ってわざわざ来てもらったのだ。 一世一代の演技は功を奏し、無事に忍との関係を終わらせることができた。 忍、ほんとケバくなってたな。 恋人として見た忍の最後の顔を、治史はうっすらと反芻(はんすう)する。 わかりやすい都会かぶれで、見てて痛々しいんだよな。染めた髪も全然似合ってなかったし。 純朴なあいつが好きだったのにな。
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