【深夜・母校・訪問】実話怪談

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そう呼ばれてはいたが、クラブ活動に使われるわけではなく、一階が駐輪場、二階にロッカー・シャワー・更衣室を備えた学生の活動拠点だ。 その二階部分から外付けの階段を、若い男女が降りてきていた。 最初に男。真後ろに女。 深夜にクラブハウスから出てくる男女…… 「若いねー。ひゅーひゅー」と囃すY。 「いや、どうせ下宿このへんだろ。どっちかの家で逢えよ」とつっこむO。 バードウォッチングに来たら珍しい鳥が見られました、という気持ちの僕。 いまどきの若者感が漂う男に対し、女は黒髪をひっつめ、事務服の様なタイトスカートに野暮ったいジャケット姿で、どちらかというと当学の学生としては女の方が量産品である。 駐輪場まで降りてくると、女はそこにとどまり、男だけがスタスタと歩き出した。 校門に向かうのではなく、僕らの車の前を横切っていくから、反対側にある原付置き場で原付を取ってくるのだと思われた。 女と車からは2mもない。 「いや、こんな時間にこんな不審車の近くで彼女一人にしちゃだめでしょ」とY。 「原チャ置き場まで歩かせたくなかったんじゃない?」とO。 案の定、男は原付にまたがると――そのまま僕らの横を抜け、校門の方へ走って行った。 走って行ってしまった。 「えっ!? カノジョ置き去り!?」 「彼女チャリなんじゃない?」 でも彼は、彼女を一瞥だにしていなかった。 駐輪場から原付置き場まで歩き出す際にも『それじゃあまたね』という別れのそぶりもなかった。 「ツレじゃなかったのかなあ」 「いや、でもツレじゃないのに連れだって出てくるか?」
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