【よだかの星に罪は無い】コメディ

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「あ、こんにちは」とりあえず挨拶すると、その人は気弱そうな顔つきに、曖昧な笑みを浮かべて小さく頭を下げた。別に小柄というわけでもないのに、肩をすぼめた姿勢で一回りは小さく感じる。 たまに巡店する本部のエリア担当の人たちではないし、こんな管理職オーラが皆無の人が新しい担当者ってこともなさそう。でも店長が戻るまで事務所に居てって言われたのは、この人の相手をしているようにって意味なのかな? 男性の隣の椅子の上に置かれたビジネスバッグから茶封筒がのぞいていた。二つ折りの履歴書がちょうど入りそうなB5サイズ。 咄嗟にピンときた。 バイト志望の人!  そう思えばどことなく求職中といった雰囲気に納得が行く。きっと今から面接予定だったのに、急に店長が売り場に呼び出され、けれど現時点では部外者であるこの人を事務所に一人にしておくのも……というわけだ。早速話しかけよう。 「ここ今、学生バイトが就活で一気に抜けたんで、人手が足りてないんですよ。先月からずっと募集かけてたんです。あ、僕バイトの田淵と言います」 「そうなんですか…」 「お名前うかがってもいいですか?」 「……松田です」 覇気のない自己紹介が返ってきた。大丈夫か。人手は足りてないし、あの店長は余程の事が無ければ、わりと面接もスムーズに通すほうだけども。 会話の弾む気配がない。しかし、なんとか会話を繋がなければ。事務所に2人きりなのに、無言で立ったままの人がいるバイト先なんて、この人も不安になってしまうだろうし、明らかに見張りに来たみたいで感じが悪すぎる。 「本、好きなんですか?」
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