【ドライブインで予約がどうのと】実話怪談

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コンビニも街の明かりも遠い山道。 不意に現れた半円状の駐車スペース、トイレとおぼしきトタン張り木造の建物に寄り添うように立つ黄ばんだ電燈がぼんやりとあたりを照らしている。 それだけを確認して車を寄せた。 とにかく山道だ。 とんでもなく峠道だ。 ここを逃したら次の休憩ポイントはどこになるかわからない。 大学の為に下宿している街から、盆暮れ正月あとは用事があれば的なタイミングで帰る実家は隣のG県、その北部の僻地といって差し支えない場所にある。 高速道路が通っているので、行き来だけならそう不自由な行程ではない。いつもは勿論そうしていた。 でも、金欠だったのだ。 帰省するガス代も惜しむほどに差し迫ったものではないが、できれば少しは節約したい。 そんな気持ちで下道――つまり山道を選択したのがあだになった。 行けども行けどもカーブと坂。 疲労は溜まる一方で、尿意も高まる一方で。 なのに高速道路のように「次のSAまで○○km」なんて表示は無い。 少し車を停め置くようなスペースも無い。 夕暮れ時――のはずなのに、山の日暮れは早い。 妙に暮れなずみ過ぎる景色の中で気も滅入っていた。 そんな時に現れた駐車場、しかもトイレ付。 迷うことなくハンドルをきる。 そこはパーキングエリアでもなく、サービスエリアでもなかった。 当然、ハイウェイオアシスなんておよそ程遠い。 レトロな意味で「ドライブイン」だった。 道路からせり出した駐車スペースは、10台も停めればいっぱいになってしまうくらいの広さしかない。 ところどころ枯葉溜まりができ、駐車用の白線はあってないようなレベルにかすれている。
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