【深夜・母校・訪問】実話怪談

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現代怪談ではよくあるパターンとして、「怪異に出会う」が「その後出会った神主(or僧侶)が危機を警告し」物語が転がっていく。 そんなものは、無意味だ。 たとえば神主が属する「神道」という宗教に、幽霊の概念は無いし、 仏教とて一番メジャーな宗派には実は幽霊(成仏しない死者)の概念が無い。 日本の司祭的存在に必要なのは、実は霊感ではなくて観念を言い表す表現力と、コミュニティーとの調和だったりする。 閑話休題。 僕たちは、とある初夏に妙なものを見た。 この前置きはそれだけの話で、言い訳だ。 初夏というにはまだ早い6月の深夜。 僕、Y、Oの三人は僕の運転する車でN県の山中に向かっていた。 久しぶりに集まって呑んでいる最中、かつて僕らが通っていた大学の話で盛り上がり、そういえばその大学のあるN県で明日、有名な祭礼がある事が話題に挙がった。 僕らは全員、そもそも休み前夜だからと集まった事もあり、 じゃあ久々に行ってみますかと話が進むのも道理。 自然な流れで、酒が呑めなくて唯一しらふだった僕がハンドルを握った。 二人を乗せて、深夜の空いた道を走ること2時間。 僕ら三人が学生時代を暮らした街へたどり着いた。 あのスーパーが無くなってる、 こんなところに×××(大手チェーンのカフェ)が出来てる、 ジ○スコがイ○ンに変わってる、等々。 思い出話に花を咲かせながら、見知った道を走って大学に向かう。 朝までどこか適当なところに車を停めて仮眠するつもりでいたけれど、 折角通るのだから懐かしの母校でも訪問しておこうとなったのだ。 時刻は午後三時を回ったところ。 お金も娯楽も無かった学生時代は、平気でこんな時間に学内をウロついて喋ったものだった―― 2号棟が新しくなっているだの、あの部室の窓はいつも鍵が開いていただのそんな話をしながらぐるりと車で一周。 校門付近のロータリーに車を停め、車の中から外を眺める。 「いやー、変わってないね」 「あそこらへんはだいぶ伐採されて景色が変わってるけどね」 「1号棟、耐震でひっかかって今閉鎖されてるんだっけ?」 「そうそう。それで2号棟を作り直して増築したんだろ」 「学生減ってるってねー……あれ?」 後部座席のOが外を指した。 「人が出てきた」 ロータリーの真横に立つクラブハウス。
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