修 行 ②

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修 行 ②

 二重門の内側、うっそうと繁った森に足を一歩踏み入れた途端、空気が変わった…… と、霊が()えない人でも感じるだろう。そしてもし、そう感じたならば、1秒とたたず逃げ出したくなるほどに、居たたまれない雰囲気がその場にはあった。  つまり、それほどまでに大量の霊が、狭い空間を彷徨(さまよ)っているのである。  -- 白いモヤモヤにしか見えないごく弱い霊がほとんどだが、奥の方からは何やら不穏な感じがする。子どもの頃の果穂のトラウマになった、武士の霊なども本当にいるのかもしれない。  彼らは、侵入者の気配にざわりとざわめき……、我先に、果穂と銀治郎の周りへと集まってきた。  彼らはまだ、接近はしてこない。銀治郎の "大物" 感をおそれての様子見、といったところだろう。  果穂はそろりとまた一歩、足を進めた。 「確かに、子どもの頃、考えていた程は怖くない…… 銀治郎で慣れたかも」 『何気に失礼だな』 「いや、銀治郎はもっと自覚した方がいいよ。ランク的には大悪霊なんだから」 『そういえば、ここに来てから、まだ一度も雷落ちてない』 「ここは島の神様の守護が強いから…… っていうのが、祖母の説」  ボソボソと話し合いながら、そろそろと森の中を進んでいく…… 今のところ、霊たちは周囲に寄ってはきているものの、何も仕掛けてこない。 『これじゃ、修行というより肝試しだな』 「私もそう思う…… ってわけで、行きますか!」  果穂は、だん、と勢い良く踏み込み、拳を手近な霊に向かって突き出した。  しゅうううううううっ  いつも通り、霊は小さな音を立てて発光しながら消えていく。  確かに、たいして強い霊ではない。  -- これなら会社に漂っているのの方が強い、とちらりと思った時…… ソレは、果穂の脳内に直接、働きかけてきた。
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