真面目が取り柄の平社員 ③

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真面目が取り柄の平社員 ③

 霊能者、と一口に言っても色々で 『視える』 だけの人もいれば、祓える人も、憑坐(よりまし)タイプの人もいる。そしてその方法は、真言やお経を唱えたりお札を貼ったり、カウンセリング的なものだったりと、多種多様だ。  そんな中でも、果穂の能力は異色だった。 (だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!)  通りかかる人もいない、薄暗い細道を果穂は走り、目の前を漂う白いモヤモヤに猛烈な勢いで、拳を叩きつける。  念を込めた拳は淡い光を発しながら、モヤモヤの真ん中を突き、小さな火花を散らす。 しゅぅぅぅぅぅっ  一撃で、さ迷っていた霊魂は、最期の光を放ちながら、消えた。 (まだまだ!)  思い切りダッシュしながら、果穂は通りすがりに白いモヤモヤを2つ、3つと殴り続ける。 (まだまだまだぁぁぁぁっ!)  殴る度に、小さな音を立てて光と共に消えていく浮遊霊たち…… この道はとにかく、そういったが集まりやすいのだ。  彼らを無差別に殴り付けて強制的に成仏させる…… それが、果穂の持つ能力だった。  -- また、1人発見。  さ迷う霊たちは、霊としての力が強いほど、より人の形に近いように、果穂には見える。  次のターゲットは、モヤモヤとしながらも下半身デブな人らしい体型であり……  いかにも、イヤミ上司っぽかった。なんだか課長に似ていて、見るだけでイラッとした。  改めて、拳を固く握り直すと。 (消えっろぉぉぉぉっ! クソ脂親父ぃぃぃぃっっ!!!)  果穂は、たまったストレスを拳に込めて、3発、4発と…… 白い人影を殴りつけた。  モヤモヤした下半身デブの影は、殴られる度に次第に崩れていく…… が。  霊なりに 『かなわない』 とでも判断したのだろうか。くるり、と身を翻すとヨタヨタと走り出した。  その背中に、果穂の跳び蹴りが炸裂する。 「逃がすかぁぁぁぁっ!」  ぁぁぁぁぁぁぁあ……っ!  イヤミ上司にソックリな霊は、小さな悲鳴を上げながら消えていき…… 「いたたた……」  後には、勢い余ってコケてしまった、果穂が残った。 『大丈夫か?』  ゾッとするような美声のバリトンが、彼女の上から降ってきたのは、その時だった。
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