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私はなんて書けばいい?
そうだ、家族に対する感謝の気持ちだ。
ママ、パパ、ロピ……。
頭の中で、ロピがじゃれて頬を舐めてくるシーンが無意識に浮かぶ。もう会わないと、さっき誓って家を出たのに。
これから叶夢が硫化水素を室内に撒いてみんなで死ぬ予定だけど、本当にうまくいくの?楽に死ねるの?未遂者は出ない?変に助かって、後遺症を抱えたまま生きていくとか、ならないよね?
なんか、怖い。突然リアルな"死"が襲ってきたみたいで、悪魔に殺されるみたいで震えが止まらないよ。
やっぱり私、本当はまだ生きていたいんじゃない?みんなほどは、辛うじて"集団自殺病"の症状が緩いから、こんなに迷いが生じるのでは?
「桧月、どうしたの?怯えた顔して。早くメッセージ書きなさいよ」
色紙を持ったまま固まっている私を不思議に思い、露香が促した。
「ごめん、やっぱ自殺無理だ……」
「は?今更何言ってんの?ここまで来て逃げれると思ってんの、あんた」
私は露香が怒り狂うのを無視し、必死に"彼"を探した。"彼"は窓側の席に座り、一人ぼーっと物思いに耽っていた。
「翡翠!行こう。若水先生のところへ」
「え?急にどうしたんだい?」
「いいから!」
私は戸惑う翡翠の手を強引に引っ張り、まだ閉じられていない後ろの扉へと一目散に走った。
「おい、羽村。お前どういうつもりだ?土壇場で若水にチクる気か?」
翡翠を連れて教室を出ようとした私を見逃すまいと、叶夢がきっと睨みつけてきた。
「叶夢。やっぱりあんたは間違ってるよ。私たちは、こんなことで死を選ぶべきではない。先生に止めてもらうよ。今ならまだ間に合うから!」
「フン、無駄な抵抗はよせ。あいつは何にもしてくれないぞ。止めれるもんなら止めてみろ。俺たちは死に狂ってる。いざとなったら、お前があいつを呼んでる間に決行することだって可能だ。そうなればお前らは生き残れるが、他の28人の死を背負って生きていくんだぞ」
「くっ……」
痛いところを突かれたと、歯ぎしりをした私だったが、迷っている暇もなく職員室へと向かった。
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