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加速
土倉叶夢の一方的な提案に、クラス中は一瞬静まり返ったが、すぐに反論の嵐が巻き起こった。
「は?全員で自殺とかあり得ないだろ。俺たちは別に死にたくないんだよ。勝手に巻き込まれるなんてごめんだ。そんなに死にたいなら、お前ら5人だけで実行しろよ」
「そうよ。確かに受験勉強はキツいし、死にたくなることも時にはあるけど、本当に自殺してしまったら高校にも行けないじゃない。あなたたちももう、つるんだりできないのよ?もう一度考え直したら?」
「その通り。死んだら二度と生き返れないんだぞ、そんなの小学校低学年でもわかるだろ。一時の気の迷いで、人生棒にふるなよ」
何人もの生徒が、男女を問わず叶夢の提案を否定する。
私は何も発しなかったが、もちろんそんなことはする気はないし、断固反対である。受験勉強が嫌という理由だけで自殺してしまったら、もう柔道の練習もできないし、好きなアニメも見られないではないか。高校にだって行きたいのに。
私は、どよめき始めたクラスの辺りを見回した。親友の萌奈と芹沙、そして男子ではいちばん仲がいい"相棒"と呼ぶべき翡翠も、黙って叶夢たちの方を一心に見つめていた。
「何を言われても、俺と他の4人の決意は変わらない。お前らには内緒で、6月頭から着々と計画を練っていたからな。俺たち5人は親や先公、学校、そして社会に対して大いなる恨みを持っている。ただ死にたいだけじゃない、この"集団自殺"はそいつらに対する"報復"という、大きな意味を持っているんだ。まだまだ未来のある若い中学生たちが、大量に死んだら大人たちはどう思う?悲しいというより、相当な打撃を被るよな。笠折中学は、必ず世間からバッシングを受けるだろう。それが"発案者"である俺の狙いなんだ。そのためには、人数は多い方がいい。いっそクラス全員でまとまって自殺して、強烈なインパクトを残さないか?」
そう一人でまくし立てた叶夢は、満面の笑みで私たち25人の顔を見比べた。
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