Chapter1   激動

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萌奈がみんなに向かって元気に挨拶をすると、女子数人が次々に返した。明るい彼女は、このクラスの中心人物だ。 生徒30人の内訳だが、男女共に15名ずつで、それぞれが三豊市仁尾町(におちょう)内から通学している。私より遠い人も結構いて、バスを使って来ている。 ホームルームが始まるまでの数分間、私たちは女子で固まってだべっていた。ちらっと横を見ると、翡翠が黙って本を読んでいる。また雑学の知識を蓄えているな、と心の中で笑った。 ガラッと扉が開いて、若い男性が入ってきた。担任の若水聖(わかみずせい)先生だ。担当教科は国語である。 「起立!礼!おはようございます」 学級委員でガリ勉の佐田博武(さだひろたけ)が号令をかけ、生徒たちはお辞儀をした。 「おはよう。早速だがみんな、受験勉強で疲れてないか?うまく進めている者もいない者も、無理をせず体調管理には気を付けような。適度に休憩をとったり、軽い運動をしたりしてな。わからないところはそのままにしないで、ノートにメモしておいて翌日に先生に聞くとかでも構わない、必ず解決しよう。あとあきらめたり、絶対に思い詰めたりしないように。一旦そういう思考に入ると、ネガティブな感情ばかりに支配されるぞ。まだ6月の後半で夏休みまで1ヶ月もある。十分に時間はあるんだから、新しいことを始めるよりも復習に重きを置いてほしい。特に数学なんかは、1年生2年生で習った範囲も沢山出題されるからな。基礎を(おろそ)かにするなよ、いいな?」 「はーい」 「はい、わかりました。若水先生」 若水先生のながーい忠告に、クラスメートたちは素直に返事をする。 先生は、短髪で超イケメンの31歳。おまけに優しく面倒見がいいので、クラスの女子はメロメロで男子からも評価が高い。イケメン好きな芹沙はもちろん、先生の澄んだ瞳や端正な顔立ちは、恋愛にあまり興味がない私にさえも目の保養になっている。 そんな人気者の先生がホームルームの終わり際、また"神対応"を見せた。
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