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死の恐怖
「あら桧月。遅かったわね。でも来てくれてよかったわ。あなたと翡翠だけは、来ない可能性もあったからねぇ。さあ、早く入りなさいよ」
私が扉を開けた途端、露香が待ち伏せをしていたように笑って出迎えた。
「露香、ごめん遅くなって。でも安心して。私、今完全に"死にたい側"だから」
「へえ。あんたも夏休み中に色々心変わりがあったのかしらね。みんな色紙に最後のメッセージを書いてるから、こっちへ来て」
露香は、教室の真ん中で色紙に書き込む十数人のクラスメートたちの集団を指差した。
叶夢を含めた他の4人の不良グループは、窓やもう一方の扉にガムテープを貼り、密閉の準備をしている。
私は無言のまま、色紙の前に歩み寄った。
「あ、桧月。久しぶり。あんたもメッセージ書くんでしょ?私はもちろん、蛍くんの元へいきたいって書いたわ。やっと彼に会える。はい、色紙」
夏休み中に連絡すら取っていなかった芹沙から色紙を渡され、私は級友たちが書いたメッセージに目を通した。そこには、生徒の悲痛な叫びや親への感謝の気持ちなどが綴られていた。
『どんなに努力しても報われない現実がある。もう先の見えない受験勉強は嫌になりました。高香高校に行くのはあきらめて、死を選びます。皆さん、今まで本当にありがとうございました。 佐田博武』
『このクラス、大好きでした!いい奴多すぎ。でもなんか頑張るの疲れた。最後はみんなで仲良く旅立ちます。さようなら。
中屋敷洸一』
『直哉、ずっと大好きだよ!あなたと出会えて、本当に幸せな毎日でした。一緒に抱き合って眠ろうね。 貴船海宇』
『蛍くん、蛍くん、蛍くん……。どうして死んじゃったの?置いてかないで、私もすぐにそっちにいくから。待っててね。 杠芹沙』
「みんな……。そんなに…そんなに死にたいの?」
私は既に20人以上が書き込んだメッセージを読んで、心に何か鋭いものが刺さるような、胸を痛める思いがしてガタガタと震えた。
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