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階段を下りて一階の職員室へ急ぐ途中、困惑した翡翠が尋ねてきた。
「桧月、若水先生に自殺計画のことを話すのか?言って大丈夫なのか?」
「今言わなきゃ、みんな死んじゃうのよ。取り返しがつかないことになっちゃうの。先生なら、きっと助けてくれる」
そう言って廊下を走り、職員室の扉を開けた。
「羽村さん、川西くん。どうしたの?そんなに焦って。勉強会で何か困ったことでもあった?」
ハアハアと息を切らす私たちを見て、勉強会をしていると思い込んでいる花井先生が尋ねた。
見渡す限り、若水先生の姿はない。
「花井先生。若水先生はどこにいますか?」
「え?若水先生なら、屋上でタバコを吸ってくるって言ってたけど。そういえば長い時間戻ってこないわね」
こんな時に呑気にタバコ?
私はスマホの時計を確認した。
16時20分。決行予定時刻まで、まだ40分ある。ここで花井先生に迷惑をかけるよりも、屋上へ行って担任である若水先生に打ち明けた方が筋が通る。
私は翡翠と目を合わせて頷き合い、今度は屋上へと足を運んだ。
「先生、どこにいるの……?」
手当たり次第に探すと、奥の方で背を向けて青空を見上げる先生を発見したので大声で呼んだ。
「若水先生!」
「ん?」
私が呼ぶと、先生はすぐさま振り返った。
「先生、大変なんです。クラスのみんなが、その……」
「何だ、桧月と翡翠か。どうしたんだ。せっかく俺が山と青空を見て、ゆったりとしていたのに」
「みんなが、し、死ぬつもりなんです。クラス全員で、しゅ、集団自殺する予定になってて。今日の17時に。先生、教室に来て助けてくれませんか?」
その言葉を聞いて先生の表情が一瞬曇ったが、すぐに笑いながら"衝撃の一言"を放ったので、私たちの方が面食らった。
「ああ、知っていたよ。まだ17時前だったんだな。お前ら、まだ生きてたんだな」
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