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「何ですか、その無責任な言い分。私の、みんなの2ヶ月が台無しじゃないですか。とにかく今すぐ教室へ来て、叶夢を止めてください。奴は17時に硫化水素を撒いて、みんなを葬り去るつもりです。今ならまだ準備中なんです、早く来て!」
「ははは。自殺なんてそんな簡単にできるわけないだろ。まあそこまで死にたいのなら、好きにさせてやればいいんじゃないか?たかが14・15で人生を投げる程度の甘ったれた根性なら、この先思いやられるしな。俺はお前らの世話するの、何だか疲れたんだよ」
「そんなこと言わないでお願いします!」
「僕からも」
どんなに説得しても我関せずな態度を示す先生に、私だけでなく翡翠も参戦して懇願した。
「どうしようかな。自殺を止めたら、なんかご褒美でもくれるのか?なあ、桧月」
「ご褒美?」
「そういえば清美は俺にゾッコンだったな。あの2ヶ月前の父母ヶ浜で、なかなかいい感じに抱き合ったぜ。やっぱり女子中学生の肌は、若くていいよな~」
ふざけんな。
いい加減にしろ、この"エロ教師"!絶対に許さない。
「てめぇ~~!!」
「桧月!?」
私の怒りは頂点に達し、若水先生に接近してガッと腕をつかみ、柔道の技である一本背負いをした。予期せぬ行動に慌てた先生は、運動神経がいいためか咄嗟に受け身をして難を逃れたが、地面に体をぶつけ、痛そうに背中をさすった。
決まった。
アニメ『スルーヒロイン』の主人公、木林彩ちゃんの必殺技、一本背負い。
どんなもんよ!
「いってぇ…お前、いきなり投げ技とか反則だぞ。でも、さすがは柔道部だな」
観念したように、先生はなぜか私を褒めた。優勢になった私は、先生が優しさを取り戻すように全力で訴えた。
「若水先生。あなたはいつだって生徒の味方だったじゃないですか。体調を気遣ったり、受験勉強無理しないでって言ってくれたり。私、あの優しさは本物だって今でも信じてます。清美のことだって、本当は彼女をかばってたんじゃないですか?不良グループの仕返しから守るために……」
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