Chapter8   救世主

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         6         命の授業 私と翡翠は、若水先生を連れて屋上から教室へと急いで戻った。後ろの扉はまだ閉ざされておらず、3人はそこから室内へ入った。 「おい、お前ら。こんなバカげたことは今すぐやめろ。もう一度考え直せ。自殺したって何も変わらないぞ」 「若水!羽村、川西。お前ら、チクりやがったな。今硫化水素を発生させようと、準備していたのに。これでやっと、クソみたいな人生からおさらばできるって時に、このタイミングで……」 「叶夢。お前がこの"集団自殺計画"の"発案者"らしいな。お前がどういう経緯(いきさつ)でこんなことを考えたのか知らないが、実行したらとんでもない大惨事だぞ。俺は大切な生徒たちを全員失って、悔やんでも悔やみきれない。頼む、一度冷静になって俺の話を聞いてくれ。他のみんなも席についてくれ。これから"命の授業"を始める」 「ちっ!」 若水先生は叶夢の肩を両手でつかみ、真剣な眼差しで彼を説得しようとした。叶夢は舌打ちをしながらも、しぶしぶ従った。 全員が黙って続々と席についたところで、若水先生は教卓に立ち、"命の授業"が始まった。  「話は桧月たちから大体聞いた。その前に、お前らに謝っとかなきゃならないことがある。俺は2ヶ月も前に、この計画について清美から相談を受けていたんだ。にもかかわらず、一切本気にはしないで黙認していた。そのせいでお前らの死への欲求を増幅させてしまっていたとしたら、本当に申し訳ない。ごめんな」 先生は、そう言って頭を下げた。 「清美!あんた、そんな前から密告していたのね?」 「う、ご、ごめんなさい……」 露香が清美に問いただすと、清美は泣きそうになりながら謝った。 「露香。清美は何も悪くない。悪いのは、お前らを甘くみてちゃんと向き合おうとしなかったこの俺だ。話を続けていいか?」 「フン、好きにすれば?」 ふてくされた露香をよそに、先生は再び話し出した。
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